4日目 奈良尾〜青方 浴衣で畳に転がり書生気分で読書満喫 久々の野菜


8時に起こされて、あわてて食堂へ。
起床後10分で朝食が食べられる自分の胃腸が恐ろしいわ…。
席に着くと、おかみさんが「おはよー」と言いつつ、
なぜかあわただしく食器を並べている。
「有川まで行くんなら、野菜の配達に行く息子に乗せて行ってもらえばよか」
というわけで、数時間後にしか出ない路線バスを待つのではなく、
息子さんの配達途中に乗っけてもらえるらしい。わーい。
ただし出発は30分後!


食卓に並ぶのは、自家製アジの開き、昨日の夜「もぎたてやけ、食べんと」と言っていた
トマトときゅうりの入ったサラダ、めかぶしいたけ、生卵(黄身が超オレンジ!)、
白いごはん、あおさの味噌汁。


びっくりしたのが、あおさの味噌汁!
「!!これ何ですか!?」「あおさよ。春に海でとっておいて冷凍しておくんよ」
今まで食べていたあおさは何だったのか、という感じの磯の香りとざくざくした食感。
超美味しいんですけど〜。春のとれたては、さらに美味しいんだろうなあ。


あわてて食べて、顔を洗ってかろうじて日焼け止めをぬり、
(ちなみに旅行2日目からスッピンで過ごしてますけど…ははは)
着替えてダッシュで下へ降りる。
「送ってもらってありがとうございます」とおかみさんに言うと、
「昨日は、ちょっと手抜きばしよったから(たぶんビッチビチの魚を出せなかったこと)、
ちょっとはよかろうことしなきゃいけんばい」とまじめな顔。
あはは。これもキリスト教徒っぽいなあ。なるほど〜。
おかみさん、本当にいろいろありがとう!また来ます!!


息子さんは、5人兄弟の真ん中で33歳。
野菜の中卸の仕事もしているので、有川(宿から車で30分くらい)などにある、
飲食店への野菜の配達をしているのだとか。
助手席に座って話し始めると、これまた超話しやすい人で、話がはずむはずむ!

五島の話にはじまって、都会と田舎の話(彼は五島生まれ五島育ちで東京には
行ったことがない。私は東京生まれ東京育ちで「田舎」がない)、
日本人でカソリックの家に生まれて育つということについて、
五島の経済状況、おかみさん含めて家族の話…など、話は尽きずという感じでした。


食べ物関係で面白かったのは、彼らにとってのイノシシ、鹿、いるか、鯨の肉が、
私に比べてものすごく身近であるらしいということ。
「鹿やイノシシは車でひくほどどこにでもおったし、肉も家庭で食べとった。
いるかは有川の人たちは大好きだし(奈良尾と有川という30分の距離でも食文化が違う!
海辺に流れ着いたいるかの頭をこん棒で殴って肉をとる行為が糾弾されたことあったね)、
鯨もこのあたりでは「捕鯨調査」の名目でとって今でも食べている。
各家庭んぼ冷蔵庫にはいつも普通に鯨肉があるし、生のウネ(という部位)は最高」
なるほどねー。
さらに「若い漁師の金遣いの荒さについて」など、おもしろすぎる逸話もいっぱい。
たしかに高校に行かず遠洋漁業に出て突然数百万円手に入ったら、
そんなアホな行為にもでるよな〜。ははは。


有川に行く前に「頭が島教会やろ?」と言ってくれて(おかみさんに言われていたらしい)、
車がなければ行けない僻地に建つ「行きたいけど無理だなー」と思っていた教会へ、
連れて行ってくれることになる。えええーーー!!本気でうれしい!!
「オレも10年以上ミサには行っておらんけど、頭が島教会は石造りですごいよ」だそう。


頭が島教会到着!

鉄川与助氏建築による国文化財で、日本の教会建築では類を見ない石造りの教会。
まさに「隠れて信仰していた」というのが納得(これまでの教会もすべて、
けしてヨーロッパの教会のように堂々とメインストリートにあることはなかったけど)な、
辺鄙な場所にあります。実際に「過疎地の典型」と五島内で言われるほどらしい。
地元の石でつくられたという外壁の石が、なんとも言えない重厚感!
この地域でも散々な迫害拷問が行われたはずなのに、
教会内には白椿のモチーフが多用してあってなんともメルヘンでかわいらしいわー。


拷問の話になったところで、息子さんが「じゃあ、鯛の浦教会にも行くとええばい。
あそこは、資料がたくさん見られるけん」ということで、鯛の浦教会へ。わーい。
「ここは、ルルド(泉)がすごかよー」という言葉通り、
建物の前には大岩から流れ出る湧き水とマリア像の配置されたルルドがあった。


しかし、どこの教会でもキリスト像よりマリア様の姿が目立つなー。
そういえば遠藤周作の「沈黙」にも、
『…イノウエ(奉行)は日本のまずしい百姓信徒たちが、
なによりもまず聖母を崇拝していることを熟知していたのです。
実際、わたしもトモギに来てから、
百姓たちが時には基督より聖母のほうを崇めているのを知って心配したくらいでした』
という記述があったような。
まあ、五島のカソリックの信仰内容はかなり土着的で独特なもののようだけど。
今は資料館になっている旧教会で、踏み絵の現物や拷問風景なども見てみたり。


仕事中だというのに、いろいろと連れていってくれた息子さんに大感謝!
「本当にありがとうございました〜」とお礼を言って、
有川にある鯨の博物館(港内)の前で降ろしてもらう。
(息子さんに「なんで鯨博物館に行きたいと?くじらが好きなん?」と聞かれ、
「食べるのも見るのも大好き」と答えたら爆笑して、
「よかねー、サッパリしてて。鯨のことは変にナイーブな話しになって困るんよ」
と言っていた。ついでに鯨の美味しい店を紹介してもらった。笑)
本当に、この親子のおかげで奈良尾は充実&楽しかったなー!


かつて鯨の有名な捕鯨地だった有川には、
港に「鯨賓館ミュージアム」なる鯨のことだけを集めた博物館がある。


入り口には、どかーんと骨格標本と剥製が天井からぶらさがっており、
中に入ると巨大なくじらひげ、捕鯨時の道具、江戸時代の鯨絵巻、
胎児のホルマリン漬け、鳴き声を聞けるフルスクリーンなどなど盛りだくさん。
萌え萌えだったのは、この地域では正月おせちの定番だった「鯨重」蝋サンプル!
お重一段、全部鯨…ああ、日本酒〜!


なんで鯨って哺乳類なのかなーと思っていたら、今回その謎が解けました。
鯨ってもともと、陸地にいた動物なのですね。
でも、恐竜が絶滅した安全な海に目をつけて海に入るようになり、
適応できるように尻尾(!)は尾びれに、前足は胸びれに進化したそうです。
なるほどね〜。
それにしても、誰もいない午前中の博物館でくじらの骨とか見ていると、
まるで村上春樹の小説に出てきそうな情景だなと思う。


おなかもすいてきたので、
歩いてすぐの「うどんの里」という五島うどんの直売やレストランや実演がある施設へ。
一応観光施設のようですが、この日は庭で地元の人たちのイベントが行われていた。


「五島うどんは、上五島が本場」というし、なんとかここで昼ごはんが食べたい!
バザーのようにお店が出ていて、いきなり心惹かれたのは「くじら」という看板。
くじらの各部位が、これでもかと試食付きで山ほど出ている。そして販売も安い!


でもさすがに冷蔵庫なしでは持って帰れないよな〜と泣く泣く断念。
もちろん試食はしまくりましたけど。
揚げたての串鯨カツは、ビールを呑めないのが拷問なほど美味!!たまらん〜!


これまた揚げたてのさつま揚げや、自家製いのしし燻製などもつまみつつ、
メインはその場でゆでてくれる打ちたて生五島うどん。


雨が降り出した中、少し並んでゲットしましたわん。
白いおにぎりとセットで200円。すばらしー!
福江で食べたのとはまた違う、スッキリしたあごだしスープが美味〜。


いよいよ来たか!という嵐のような雨は1時間ほどであがり、
今夜の宿「農家民宿かたやま」へ迎えに来て欲しいと電話を入れる。
すると「今、昼ごはんば食べとっけんで30分ほどで来るけん」とのこと。ははは。
ターミナルで待っている間は、冷えまくったラガーを売店で買ってベンチでグビリ。


しばらくするとおかみさんが迎えに来てくれたので、
車で30分ほどの青方エリアへ。
話を聞くと、おかみさんは五島出身でずっと専業主婦だったのが、
10年ほど前に突然今の民宿を始めたそう。へー。
五島で商業農家はほとんどいないらしいが、少しずつ庭でつくる野菜を出して、
特色を出している宿。ああ、最近野菜不足だから楽しみ!


宿、というか家に到着すると、まさに完璧な純日本家屋。萌えるわ〜。
1階はおかみさんとご主人が生活していて、
2階の6畳+8畳の続き間をまるごと貸してくれる。わーいわーい。


とにかくすごいのは、建物中どこもかしこもチリひとつないこと。
40年くらい前に手直しをした家らしいが、
おかみさんがものすごく丁寧に床や柱を磨いて手入れしているのがわかる。
(ちなみに水周りはリフォームしたので、風呂や洗面所は使いやすい)
もうねー、廊下とか足が滑るんじゃないかってくらいあめ色にピッカピカ。
庭には、おとなしいおじいちゃん柴犬。


おかみさんに裏の畑を案内してもらい、
たわわに実るナスやオクラ、パプリカ、ピーマン、ゴーヤ、
群生するしそ(花だけを摘んで今夜は天ぷらにしてくれるそう)を見て、
夕食への期待を高める。うわー、楽しみ。


それから「ちょっと近所を散歩してきます」と、ぶらぶら回りを歩いてみた。
うーん、本当に歩ける範囲に店がない。笑


ひたすら続く道路をてくてく歩きながら、
「こういうところで生まれ育ったら、私の人生も変わっていただろうなあ」と思う。

宿に戻ってシャワーを浴びてスッキリ。
部屋の続きの間には囲むように小さな廊下がついていて、
その向こうの大きな窓には山をバックにした静かな入り江が見える。

おかみさんが縫った超古典柄のゆかたを着て、
畳に寝転びながら持ってきた山積みの本を端から読破。優雅な書生って感じ?


聞こえるのは扇風機がまわる音くらいで、
本を読むのに飽きると冷蔵庫から麦茶を出して飲んで海を眺める。ああ、幸せ〜。

おかげで、10年くらいずーっと気になっていた本を読み終えました。
大学生のときに生涯初めての告白をして玉砕した人に借りた本で、
借りた当時は「どうやったら彼に喜んでもらえる感想が言えるか」だけでいっぱいで、
一応読んでもまったくその本と向き合えていなかったのよね。
ただ、心のどこかで「面白い本だな」という印象があったので、
この状況で読み直せてよかった。そして、ホントにものすごくステキな本でした。
言葉が意味を持つ瞬間について繰り返しフォーカスを当てた本で、
今なら、素直にこのことについて彼と語りつくしたいなと思う。


夕食の時間になり、呼ばれて階下へおりる。
すると出てきたのは、カンパチとイカの刺身(たっぷりのオニオンスライスが付け合せ)、
アジの塩焼き(目の前の入り江でも、立派なアジが竿で釣れるらしい!
かぼすもお父さんが近くに木を持っていてとってきたもの)、
煮物(厚揚げ、にんじん、ずいき、干し大根、こんにゃく)、
春雨サラダなど。


酒は、「焼酎が好きなら、これ飲めばええばい」と麦焼酎の一升瓶がドーン!
さらに「これもうまか」と大吟醸日本酒一升瓶が出てきたり、
「オレが漬けたばい」という甘さ控えめ梅酒などなど。
梅酒を麦焼酎に少し加えると風味がいいなあ。


食材は、ほぼすべて五島産。平ぺったい干し大根とか珍しいねー。
そして、どれもこれもホントに美味しいんですけど!


ご主人やおかみさんと話をしつつ、心おきなく焼酎を呑む。
話のついでに、近所にある壱岐島とかについて聞いたら(私にしたらのどかな島の印象)、
「あそこは観光ずれして、せからしくていけん」とかご主人が言うのが興味深いわ〜。
おかみさんも「五島の教会が世界遺産になるとは、よかところもあるけど、
悪かところもあっけん心配。そんげん観光客が来なくても、
静かに暮らすくらいはでくっとに」だそう。
(ちょうど今、五島の教会郡が世界遺産登録に申請されている最中)
個人的には、たしかに世界遺産になることによって弊害もあると思うけど、
やはり過疎化が進む五島で教会を後世に残す術としては、
世界遺産登録ほど守れる環境はないんじゃないかと思う。


しばらくして出てきたのが、先ほど摘んだシソの花とナス、ピーマンの揚げたて天ぷら。
「この時期を越えると、芯が残るけん今だけやね」という花は、
初めて食べたけど美味しいね〜。花なのにシソの香りがする!


それに、やはり先ほどとったゴーヤとベーコンのかきあげ。

(夕方に来た近所の人が「ゴーヤはベーコンとかきあげにするといいよー」と言ったのを、
「ちょうどベーコンがあったけ」と本当に実践してくれた)
これも塩気がちょうど良くて素晴らしく酒のつまみ。たまらんわ〜。


さんざん飲んだ後、白いゴハンと、あおさのすまし汁、高菜の油炒めでシメ。
ああ、このあおさも美味しい〜と思ったら、
ご主人は「今年のあおさは香りがないけんね〜」という。ええ?これで!?


一升瓶、氷、グラス、水、あまった天ぷらを持って2階に上がり、
0時過ぎまで本を読んですごす。

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